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第3話 《川釣り》 |
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釣りは「フナに始まりフナに終わる」と江戸時代から言われているようだが、この格言の「フナ」とはマブナのことであり、釣り番組などで出てくるヘラブナではない。子供の頃には最も手近な釣りがこのフナ釣りであり、私もその例に漏れなかったのである。 |
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鯰(ナマズ)もよく釣った。鯰は鰻(ウナギ)に勝るとも劣らない味を持っていて、台湾ではよく料理に登場した。台湾の鯰は50〜60cmだが、中国では1m前後にもなるそうだ。貪欲で、蛙、ドジョウ、フナやハヤ等手当たり次第に食べる無法者(?)である。広島では太田川で置きバリとか漬けバリと呼ばれる延縄式のやり方で、夜行性の鯰を狙っていた。夕方にエサを漬けておき、早朝に取り込むのである。釣果は「時の運」である。 |
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鯰を釣っていてよく掛かるのが (ギギ)である。どちらも夜行性であるから仕方がないのだが、背びれや胸びれに硬い棘があり刺されるとかなり痛い。毒性は無く時間が経てば治まる。台湾ではギギラと呼んでいた。 |
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鰻(ウナギ)釣りもよくやった。ウナギ釣りは昼間は「穴釣り」であり、夜は漬けバリが常識である。穴釣りは、川や池にある堰や石積堤の石の隙間等でウナギの巣になりそうな穴を探るものである。穴を見つけると、1.0〜1.5m位の竿にエサを付けて差し込み、ウナギが食いつけばと言う方法である。穴を見つけることがコツであり、これは経験がものを言う。背丈位の水深で、穴を見つけては竿を差し込むと、面白いように釣れた。長い間潜っている必要があり、長ければ釣果は上がるが苦しいのも事実である。現代の子ども達には見ることも、想像することも、残念ながら経験することも出来にくい事であろうが、子供心に冒険心を擽られるものであった。 |
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台湾での釣りはこのように川釣りが主で、海釣りの記憶はあまりない。どこかの波止で祖父が釣り上げるのをただ黙って見ていたように思う。 |
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