清水三徳氏(元城北小学校校長)の釣り人生を振り返ります
第5話 《鯉と犬》
 私は動物が好きである。中でも「犬」が大好きだ。家内は私の比ではなく盲目なぐらい好きのようだ。「目は口ほどにものを言う」と言うがこの言葉は人間よりも動物にあてはまると思う。自分の体調が悪いとき、寂しい時、嬉しい時、様々な表情を目が作り上げ私達に目で語ってくる。
 私は夫婦釣りと称して、家内と良く連れ立って釣行に出かけた。数日間の泊まりがけも良く出かけたものである。この頃、長い間家の留守を守り、帰りも夜遅くなるのだが、待っていてくれたのは北海道犬の「龍」君である。北海道犬は以前はアイヌ犬とも呼ばれ、南極探検記の「タロ」「ジロ」でも有名な種族で、今は「(社)天然記念物北海道犬保存会」によって保護、保存に努力されている。
「龍」君  北海道犬との出会いは広島駅であった。名前は「太郎」でなんとなく魅了されるものがあって引きとることにしたが、病には勝てず早世してしまった。二代目が「龍」君である。彼は14才まで長生きし、留守番だけでなく、山陰をはじめとして私達の釣り旅行によく同行してくれた。四国の桂浜の橋のたもとで私達と車中泊したこともある。長生きしてくれた「龍」君だが、彼にも寿命がくる。目がうすくなり、耳が遠くなり、足、腰が弱くなってくる。
 しかし散歩だけは忘れなかった。といっても近くの竹ヤブと太田川の河川敷で、最後の日も散歩を忘れることはなかった。釣りと私達と共に生きた「龍」君は今も私達の脳裏によみがえってくる。
「ケイ」(手前茶色)と「蘭」(白)
 別れの哀しさから二度と犬は飼うまいと思っていたが、今度は「蘭」嬢がやって来た。それより前には神戸で震災にあい孤児となった「ケイ」を引き取っていた。「ケイ」と「蘭」は親子のように仲良しで、二匹とも車に乗ることが好きだった。
先代「龍」君は海が好きだったが彼らは川が好きである。
 私達は自分たちの散歩に犬の散歩をかねて毎日のように太田川河川敷に行く。安芸大橋の上流3qの所に車を置き河原まで歩くのである。そこで「蘭」嬢を放し、家内は「ケイ」を連れて散歩に、私は川のほとりに腰をかけて川の流れを楽しむことにしている。一遊びした後の家族集合場所が私の所である。
 「蘭」嬢は放されたら「鯉の池」へまっしぐらに飛んでいく。
「鯉の池」は彼女が見つけた、川の水が池のようになってそこに魚が住むようになっている場所である。彼女はこの池の鯉が大好きなようだ。私達の目にも鯉が泳いでいるのがはっきり見える。赤い色をしているのが「緋鯉」黒い「真鯉」・・・彼女は池に近づき、足が浸かるぎりぎりのとこまで入ってじっと鯉達の泳ぎを見ている。鯉達も恐れず「蘭」嬢の足もとまで寄って悠々と泳いでいる。「蘭」嬢はこの鯉達に会いに来るのを日課としているのだが、何を会話しているのだろうか。仲良きことは楽しき事なのだろう。
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