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第13話 《鹿島の猿》 |
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四国愛媛県南端に足摺宇和海国立公園がある。チヌ釣りのメッカ御荘湾から車で1時間程の距離であるが、そこには全国の磯釣り愛好者が夢にまで見る名磯が点在する。中でも中泊渡船基地から向かう磯は、巨グレ(尾長グレ)に挑戦出来る磯が多い。また、ここは、日本で最初に指定を受けた海中公園『宇和海中公園』行きグラスボ−トの発着場であり、色とりどりのサンゴや熱帯魚の楽園など、南宇和の美しい海の魅力を堪能できる。 |
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この海中公園がある「鹿島」が、多くのポイントを持つ、釣り場案内の書では有名な磯釣島なのである。 |
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ここ「鹿島」は無人島であり、ここの住人は野生のニホンザルと、鹿である。この住人は、決して釣師と仲良しな訳ではない。猿が居ようがお構いなく釣師は魚が釣れるであろう場所を求めて渡磯する。「鹿島」は上物、底物いずれも狙えるポイントが多く、比較的足場の良いのが特徴である。渡船基地からも近く、独立島であるから、風や波浪に合わせた対応も可能である。 |
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磯釣りには暗黙のル−ルとして、『竿は一人1本、撒餌は余分に持たず、残ればゴミと一緒に持ち帰って港で処分する。』ことがある。タバコと一緒で、マナ−を守れない人が少なからず居るから、磯が汚れ、ゴミだらけになってしまう。このゴミに、猿が餌付いてしまったことから、「鹿島の猿」は、磯釣り師と仲良しになれなくなってしまった。 |
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この猿にとって島の磯辺に来る人はお土産をもって来る生き物と映るようで、このお土産こそが、釣師の持参する食料であり、撒き餌に使う集魚材なのである。私やその周りの仲間達は、底物師と呼ばれるカテゴリであるから、餌類に猿が気に入るものはない。気になるものは弁当であり、お八つにと持参した果物類である。 |
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釣師が準備をしている間は、猿はどこを見渡しても気配は無い。釣りを始め、竿に集中し始めた頃合いを見計らったかのように、何処からともなく足音もなく現れ、それらを失敬して行く。リュックに入れていても、利口な奴もおり、ご丁寧に紐を解いて持っていってしまう。大きさは座った高さが60〜80pぐらいで、近くで見ると、威嚇してくるだけ恐怖感はある。 |
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私は、盗られたら仕方ないと諦めることにしているが、中には猿と格闘をした人もいるらしい。下手をすると命懸けになるから、これは止めた方がよいと思うし、怒らせると、石や岩を落としてくるから始末がわるい。逆説的になるが、このような島であるから磯荒れが少なく魚影も濃いのかもしれないと思うが、バナナやリンゴは集猿材となるので、それらの先住民が生息する島には、決して持って行かないことである。 |
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