清水三徳氏(元城北小学校校長)の釣り人生を振り返ります
第15話 《石鯛釣りについて−2》
イシダイ  磯釣りの中でも豪快さでは石鯛釣りが一番であるとは前編で記したが、繊細さもグレやチヌ釣りに劣らない。磯の代表的なふかせ釣りのように相当量の撒き餌や集魚材を使うわけでは無いが、高価な餌を効率的に効き目良く活用するには、潮を読むことも一つだが、竿先の僅かな動きを通じて獲物と遣り取りをする繊細さは不可欠である。神経質である必要は全く無いが、何れの釣りにおいてもではあるが、特にこの釣りには集中力が無ければ無理である。
 今回は代表的な石鯛釣法について私見をまとめてみた。
【置き竿釣り】
 先調子の竿を基本に、餌を求めて回遊している石鯛の習性と、潮回り、磯のポイントを確実に狙う方法である。干満差の現れる磯では、石鯛が好むフジツボやカメの手などの貝類や、その間を動き回る磯カニを目にすることが出来る。
また、磯周囲の岩相や、高い位置から磯周辺を見渡すことで、周囲の根や海溝(ミゾ)を推測することもできる。これらの地形情報とその日の潮回り、海水温から、攻めるポイントと深さ(棚)を設定し、徹底的に餌を落とし込むのである。この釣法は古くから行われているものだが、熟練を要する方法でもあり、アタリを待つ形になるので、多くの方々からは「待ち釣り」と思われている。実際には、この釣法は、基本に則った「攻め」の釣りであり、多くの自然情報を読み切る力が不可欠であり、深い山で長期に獲物を求める「マタギ衆」の感覚に近い、磯(自然)と共生する方法と思っている。 磯
【南方宙づり】
 短めで軽い胴調子の竿を基本に、撒き餌をこまめに行い、磯際に潮やポイントにあまり拘らず石鯛を釘付けにして浅めの棚で狙う方法である。基本的に離島や離れ磯の魚影が濃いと思われる地域で有効と考えている。餌には貝類の剥き身を主に用いて、素早い手返しで繰り返し同じポイントを攻めるのがコツである。見た目に手返しが早いため「攻め釣り」と目されるが、魚影が薄い地域では効果が乏しい様に思われる。「置き竿」方式の基本と併せれば良いとも思われるが、「釣りを楽しむ」事からは離れてしまう様に思えてならない。小物まで釣り上げてしまうことになるので、あまりお薦めとは言い難い方法と思っている。
  どの様な釣りも魚が居なくては話にならない。小さな幼魚まで数釣ってしまっていては何れ種が枯渇する事にも繋がってしまう。石鯛釣りはその力強い引きに魅力を感じて取り組む、言い換えれば大物釣りの醍醐味を味わうものである。魚の生態系を変えてしまうような乱暴な方法は避けるべきではないかなと思う。「釣れればよい」では情けない話である。
 石鯛釣りに取り組まれる方々には、磯に竿を構え、一段落して見渡す時の海の美しさ、磯の不思議さに、自然に溶け込む魅力を感じる釣り師になっていただきたいと思う。撒き餌の多さは磯に残されるゴミ、不廃物の多さに繋がってくる。美しい磯、輝く海、楽しい釣りを次世代に引き継ぐのも、現在の釣り師に架せられた役目と心得てもらいたいものだ。
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