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第21話 《春の海〜1》 |
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『桜鯛』とともに「春告魚」と呼ばれるものに『目張(メバル)』がいる。地域によって「春告魚」は異なり、北海道では「鰊(ニシン)」と聞いたことがある。瀬戸内海では「鰆(サワラ)」は将に名が表しており、「玉筋魚(イカナゴ)」も関西では「春告魚」と呼ばれる種類である。 |
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メバル釣りは「竿あしらい」入門にはもってこいと思っている。色々な釣り方があるが、是非に延べ竿をお薦めしたい。初心者には難しいと敬遠される向きもあるが、ここで手にした「竿あしらい」は全ての釣りに応用ができる。延べ竿で取り組むメバル釣りは面白さがまた格別とも言え、この竿のあしらい方と判断力で釣果にはっきりと差が出るものでもある。 |
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延べ竿は、昔ながらの尺貫法で呼ぶことが多い。三間竿ならば5.4m、三間半なら6.3m、四間ならば7.2mの長尺竿となる。初心者の方は最低でも三間竿を使って戴きたい。今は短い振り出し型の渓流竿を使われる方も見かけるが、1mの竿差が釣果に大きく影響するのが延べ竿の面白いところである。因みに私の拙文の編集者は、四間の長尺を見事に操り、端で見ていても感動するほど実に美しい弧を描かせている。 |
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メバル釣りの仕掛けや餌は様々な紹介本があるので、此処では遠慮するが、『メバルは足で釣れ』と言われるように、ポイントを探って動くことが多く、また、夜釣りの方が効率的とも言われているため、出かける時に安全装備だけは充分にして頂きたい。お節介ながら一言付け加えると。『目張凪(めばるなぎ)』と言われるように、海に波が目立つようではなかなか釣れない。実はメバルは魚のくせに泳ぎがあまり巧く無いのである。 |
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最期に美味しいメバルの味わい方を一つ。メバルは数釣りの対象であり、生命力はあまり強くないので、針係りした場合大半は弱ってしまうので、小さい魚を釣り上げても放流は無意味である。そこで、小さいメバルは、南蛮漬けを好まれる方も多いが、腑を出して風通しの良い日陰で干し魚にされることをお薦めする。この干しメバルの出汁で真夏の冷やし素麺の汁を作ると料亭以上の格別なものになる。お試しあれ。 |
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