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第24話 《初夏の海〜1》 |
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陽射しに強さが増し、風が新緑の爽やかさを運び出すと、磯釣りは絶好の時季を迎える。 |
陽射しは暖かくても、風は肌を刺すような春先から、直接の陽射しも強く、海からの照り返しが強烈となり、南の噎せ返るような湿気を帯びた風が襲ってくる真夏との過渡期になるこの季節は、磯に立っていても気持ちが良く、青い海と空に溶け込める様な錯覚にも楽しさがある。この頃の海は、幼稚園の運動場と化す。春の産卵期を過ぎて、ふ化した幼魚が群れを成してアチラコチラで泳ぎ回っている。その群れをシイラ等の大型魚が追ってくるのだが、襲われて水面近くに飛び跳ねる幼魚には、鴎や鳶といった空中からの脅威が待っている。まさに成長するためには闘いの連続であることを報しめす光景が展開されるのもこの時期ならではあろうか。 |
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釣りも同様で、磯端で撒き餌をすれば、小さな魚が雲霞の如く寄ってきて、目論見通りの釣りが出来ない状態になる。この時期には釣果の差が経験に裏打ちされた読みの差としてが出てくるのだが、それを度外視しても磯釣りを始めるには良い季節であり、魚の大小、対象を気にしなければ、必ず何かがヒットしてくれる、面白い時季でもある。 |
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さて、真剣にこの時季の磯釣りを楽しむには、イサキ釣りをお薦めする。初夏が産卵期のイサキは、この時季には磯近くに群れを成して集まってくる。釣りのポイントは、この時期は群れで行動する魚であるため、群れが磯近くに居着く撒き餌をすることで、撒き餌を切らさず散らさないことを心懸ければ特に難しい釣りにはならない。根本は夜行性の魚であるから、昼間のタナは深めから探ってみるのが効果的と思える。 |
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どのように食べても大変美味しい魚であって、人気の高い魚であるが、この時期に磯際で釣れるイサキは産卵間近のメスが多い。数釣りも可能な時季ではあるが、種の保存の為にも控えめに御願いしたいものである。 |
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