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第25話 《初夏の海〜2》 |
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『目に青葉 山ホトトギス 初鰹』多くの人がこの季節に口にするであろう有名な句は、江戸時代初期の俳人山口素堂の作である。この句は江戸の季節感を表したものであり、句中の「鰹」は房総沖を北上する「のぼりガツオ」とされている。 |
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秋の「もどりガツオ」と違い脂の乗りは少ないが若々しい味が売り物のようである。この鰹の血合い(魚の筋肉をつくる細胞のうち、赤色筋繊維という細胞が多く集まった部分。 |
血液中で酸素を運ぶ役割を果たすヘモグロビンや、筋肉の中で酸素を貯蔵する役割を果たすミオグロビンといった赤い色の色素たんぱく質が多く含まれている。)は酒飲みには強い味方になるそうで、某健康飲料でお馴染みのタウリンが多く含まれ、他に鉄分、ヴィタミン、カリウム、DHAの含有率も高いそうである。 |
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特にタウリンはコレステロールを下げ、不整脈を改善して心筋を強化し、肝臓の解毒能力を高めるとも言われており、これにニンニクを添えると効果は高まるそうだ。刺激が強く、高齢者には厳しい味覚となりがちなので、私はタマネギを代用して頂くこととしている。 |
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青葉が美しいこの時期には、地域差はあるが真鯵(マアジ)が絶妙な旨さを醸し出す時季でもある。鰺釣りは、岸壁等でサビキ仕掛けを用いた小アジ釣りがよく知られているが、磯から釣る30〜40pのマアジはかなりの技術を要する難敵である。アジは、どの種類も共通のようで、口の周りの筋肉が弱く、簡単に切れやすい魚であるため、磯釣りでヒットさせても、暴れ回る内に針掛かりしたところが切れて針が外れてしまうことが多い。高級魚の縞鰺(シマアジ)も同様で、いくらヒットさせても取り込めるのは僅かなチャンスしかない。釣り師にとって、針が外れて喜び勇んで深みに還って行く魚を目の当たりにする事ほど悔しいものはない。新鮮な旬のアジを味わうには房総半島の代表的な郷土料理として知られる『なめろう』が一番だろう。新鮮な大葉(青じその葉)とショウガをみじん切りにして、小さく刻んだアジを混ぜ合わせ、味噌で味付けながら叩いていく。粘りが少し出てきたところで形を整えれば出来上がりである。これに甘酢を併せれば酢なますとなり、また格別な味覚となる。真夏には、これを氷水に溶いて氷なます(水なます)とすれば、暑気払いに最適なものとなる。魚好きには堪らない一品となることは請け合いである。お試しを。(一部読売新聞社『もの知り百科』を参考にして加筆しました。編者) |
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