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第32話 《初秋の磯つり(2)》 |
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今年も紅葉の季節が近づいてきた。秋磯も本番間近である。とはいえ、昨今の海は温暖化の影響とかで、魚の種類に変動があるらしいが、実際には未だ目にしていないので、実感がわかない。季節感のない海はご勘弁いただきたいものだ。 |
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秋は、小魚が成長途上であるのと、移動性の魚が元気になるのがほぼ一致して、海は賑やかになる。移動性の魚をねらって大物の回遊魚が動き始めるためだ。大型の回遊魚はこの時期は脂が少なく旨味は少ないが、餌を追う元気は一杯なだけに、釣味は十分である。大型化してずっしり重みのある味と違って、若者が走り回る力強さの味がある。 |
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意外に知られていないが、真鯖(マサバ)は回遊魚である。世界中の暖海に広く分布し、日本全域で見られるために居付きと思われているが、春から夏にかけて北上し秋から冬は南下する回遊魚である。海面の表層近くを大群となって回遊し、産卵期は3月から8月で、最大は50pを軽く超すものがある。脂の乗りの良い秋が旬であるが、青物に弱い方は、旬時はアレルギ−が厳しいかもしれない。一方で、青物好きにはこの魚の旬時の旨さは何物にも換えられない。生サバのお刺身は、寄生虫の怖さを別にして、実に美味しい。ここに面白い話がある。関西以西の海岸地方(漁港に近い地方:広島もここに入る)でサバ刺しと言えば、当然のように生ものである。一方、築地を代表にする関東圏では、決して生ものは出てこない。無条件でシメサバとなるようだ。広島では、生サバと〆サバは確実に区別するから、東京で「鯖のお刺身」と頼むと、〆サバが出てきてがっかりすることがある。所変わればの一つだが、逆もまた有りなので、気をつけるに超したことはない。 |
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旬の鯖も磯で釣れば釣味は十分である。釣り上げれば瞬時に締めて、血抜きをしっかりすることだ。これを怠ると、折角のサバが残念なことになる。血抜きした後は、海水に浸した古新聞にくるんで、ク−ラ−に確保しておく。群れで回遊する魚であるから、群れを逃がすまいと焦る気持ちも解るが、他の魚と違って、極めて痛みの早いものである。お気をつけられると良い。(沢山釣ってご近所に配っても困る場合が多い魚でもあるから、少なく釣って、きっちりお土産にする方が効率的と思います。) |
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最期に、この時期のサバは味噌煮が美味しい。ショウガと併せて煮込むと、臭みも消えて柔らかく、高齢者にも大変食べやすい。お試しあれ。 |
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