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第36話 《寒の釣り(1)》 |
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暫くご無沙汰している内に、「寒」の音が聞こえてきたようだ。以前にも述べたが、「寒」は二十四節季の小寒の日から立春の前日(節分)までの約30日間を言い、大寒の日がほぼ中間となる期間の総称である。例年小寒は1月5日であり、我が釣友たちは、長きにわたってこの日を竿始めとしている。と言っても、納竿は12月の初め「大雪」、昨年は12月6日としているのだから、なんの1カ月釣りに行かないだけである。さても釣りは大変な道楽と言われる所以である。 |
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最近は冷凍技術が進歩し、個人でも大型の冷凍庫を備える強者が増えてきたが、特に底物の超大型魚を狙う輩には、餌とする中・小型の魚を貯蔵しておく必要があるため、その傾向が強いようだ。その一人である親子ほども年齢の離れた年下の釣友は(弟子と呼ぶには失礼な腕前なので)、毎年この時期に無謀にも「九絵」を狙うことにしている。 |
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まあ年中狙っている訳だから特筆すべきではないかもしれないが、どの様な釣りに関する書物にも真夏の夜釣りで狙うと記してあり、主として船釣り対象とされるこの魚を、酷寒のこの時期に磯から狙う人はまず居ない(本人は、「私が居ます」と涼しい顔で言うのだが・・・・)。それも幻と呼ばれ、当たりも滅多に捕ることのできない釣りである。これでは口さがない友人達が『耐寒訓練』と呼ぶのも宜なるかなと思える代物である。 |
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この時期は、「鰤」に代表される回遊型の大型魚は、小型の回遊魚が餌となるため不自由は少ないが、居付きの魚は、小魚が深みに下ってしまうので餌も少なくなる。一方で、そうなる前に秋口から初冬にかけて餌を十分に獲って身に脂肪分を蓄えた自分自身の動きも怠慢になり、いわゆる冬眠状態になるため、この種の魚が「寒」には最も釣りにくいのも事実である。但し、釣れれば超大型であり、美味しいことこの上が無い。狙いたくなるにはその実績が有るからだが、寒さとの戦いは楽では無い。食欲と釣欲が寒風を押し返すのであろうが、私には到底真似が出来ないし、よほどの熟練でもない限りお薦めできない釣りである。只、お裾分けが無上の楽しみであることから、引き留めることもしていない。今年の釣果はどうだろうか。 |
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