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第38話 《寒の釣り(3)》 |
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『最近の海は暖かい』『「寒」とは言えどぬるま湯の海、まるで◎◎◎のようですよ』等と連絡が入る昨今である。本当に地球温暖化はここまで来たのかと思案するが、やはり「寒」は冷えるものだ。とは言え、10年前には水温12〜16℃まで下がっていた四国太平洋岸でも、この時期そこまでは下がっていないのだから、様変わりは本当のようだ。相変わらず酷寒の底物釣りの話で恐縮だが、今年はどうもハズレだったらしい。 |
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だが前回と違い嬉しい「外道」がお土産として食卓に上った。『マハタ』(漢字では「真羽太」が正解?)である。「ハタ」と言う言葉は「鰭(ひれ)」を指すものであり、ハタ科の魚が鰭に特徴があるからこの名が使われるのかもしれない。名前の由来を探るのも面白い。因みに高知県では「ハタジロ」とも呼ぶらしい。 |
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写真参照【市場魚貝類図鑑:「www.zukan-bouz.com」】より(編者) |
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『マハタ』は、将に「クエ」の縮小版と言っても差し支えない風体をしている。縞模様や体色もそっくりであり、間違えそうなものではあるが、この魚は大きくても7〜80pまでが磯で釣れる限界である。かと言って、「クエ」より釣れる確立が低いほど個体数が少なくなっている。現在は養殖が盛んになっているから、中型のものは料亭などに出回っているようだが、魚屋の店先で見ることはない。 |
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大型になっても1m前後と言われ、老成魚と言われる『カンナギ』は深海で2mぐらいまでなるとのことだが、定かではない。 |
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さて、今回の『マハタ』だが、釣り上げた当人も一瞬「クエ」と見間違えたようだ。「クエ」ならば放流サイズの60pそこそこだが、クエの幼魚にしては色が黒い。以前釣った『マハタ』はもっと色白だったし、と思案投げ首だった。彼らのプライベートルールに「クエ」の1m未満は放流との約定があり、船頭に確かめてからと磯の大きな潮溜まりに活かしておいたらしい。「クエ」の大仕掛けによく食いついたものだと疑う人もいるが、餌によってはハタ類が食いついてくる。今回は中型の針にイカを短冊にして付け、仕掛けを底から少し浮かせ気味にしたものだったそうで、手を変え品を変えて釣ろうとする意欲には頭が下がる。 |
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船頭の証明で運良く我が家の食卓に上った『マハタ』だが、白身が美しく、豊富な旨味が何とも言えない充実感を与えてくれた。今年も有り難いお土産に出会えた「寒」であった。 |
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