清水三徳氏(元城北小学校校長)の釣り人生を振り返ります
第43話 《猛暑中閑あり》
 まるで砂漠の街になったかのような猛暑日が続く立秋後の広島である。熱帯夜とも言われる寝苦しい夜が続くと、流石に釣りに行けない。
蘭 釣りどころか、日々の所用すら億劫になってしまい、口さがない友たちには『関節にサビが出てきますよ〜』とまで指摘される始末である。我が家で元気なのは北海道犬の『蘭』嬢だけであり、彼女に引き摺られながら朝夕の散歩と、「ボケ防止!」と釘を刺されている本編の執筆だけが日課となっている。それにしても昨今の夏の暑さは尋常では無い。諸兄にも熱中症対策はお忘れ無く。
 さてこのような状況でも、せっせと磯通いをする釣友連の報告は絶えることがないが、残念ながら今夏には目立った釣果は見当たらないようだ。今年は不思議と台風の発生が少なく、高気圧が頑張っている加減で、海は穏やかである。台風が南方海上に姿を現すと、少なからず「うねり」が沿岸に現れ、前線が天気図に描かれると、大小の波浪を発生させる。夏場は『夜釣り』には有り難い季節であるから、今年のように海が穏やかであることは実に有り難い。では何故釣果が今ひとつなのであろうか。唯々暑すぎるのである。
昼間の磯は、ともかく暑い。直射の陽射しは強烈であるうえに、磯場の岩壁や海面からの照り返しも半端ではなく、多少の誇張を加えれば、まるでレンジ付きのスチームオーブンの中に居るようなものだ。釣りから帰った友の顔は、例外なく「食べ頃の焼むすび」状態であることから、その凄まじさがよく分かる。例年ならば、土砂降りの夕立や日が暮れると発生する放射冷却作用による風、海面と海底部分の温度差によって発生する潮の攪拌で空気や海水の温度が落ち着くものであったため、夜の海は、魚も釣り師も活性化したものであった。 やきむすび
今年はそうではないようだ。海水は、海面はもとより海底近くも温度が高く、潮の廻りも期待できる状況ではないようだ。言い換えれば、磯近くの浅場では昼間に熱せられた海水が冷める暇がなく、魚がこの暑さを敬遠している状況にあるようなのだ。水温には敏感な魚たちである、深みの心地よい海水域に「避暑」としゃれ込んでいるのだろう。これでは、釣りにはならないのである。今年の夏は、釣り師も「夏休み」が賢明のようである。
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